「算数(又は数学)って、なんの役に立つの?
何のために計算を練習するの?
電卓があればいいじゃない。」
幼い子供からこう聞かれて、困ったことのある親御さんは多いと思います。
では、こういう疑問に対して、どう答えたらよいか。
僕は、その答えを一つ、持っています。
答え
「数字の感覚を鋭くするため。」
これはもちろん、答えの一つにすぎませんが、
僕の経験をお話しします。
何年か前、僕は、地元の役場から、住民税の納付書類を受け取りました。
前の年の収入をもとに住民税は計算されますが、
その収入の金額が、僕のおぼろげな記憶をもとにしても、
何やら多く計上されているような気がします。
「ん?何か多いぞ?」
そこで、前の年の僕の給与明細書をもとに、
前の年の僕の収入を計算したら、
案の定、役場から送られてきた書類では、
数十万円、収入が多く計上されていました。
原因は、雇用者側の申告ミスです。
僕は役場にその給与明細を持っていき、
手短に事情をお話しして、役場の方にも確認してもらいました。
そして、僕の払うべき住民税は、1万円近く、負担が軽くなりました。
ここで、子供が陥る罠があります。
子供であれば、こういいます。
「給与明細の計算なんて、電卓でできるじゃない。」
そうです。
僕も、給与明細の計算は、計算機で行いました。
しかし、もっと重要なことがあります。
役場が最初に計上した僕の前年の収入の金額を自分で見て、
「ん?何か多いぞ?」
と、気づくためには、数字の感覚が鋭くなくてはなりません。
ここで、自ら異変に気付かないと、いくら優れた計算機を所有していても、
そもそも、一年分の給与明細を引っ張り出して、
わざわざ計算機で計算しようなどとは、誰も思いません。
過去一年分の収入の金額を確認しようなどとは、思わないのです。
その結果、払う義務のない税金を、1万円近く多く支払うことになります。
そう。
数字に何か異変があった時に、
素早く気付くため。
数字の感覚を鋭くするため。
そこに、計算練習、ひいては数学の勉強が必要なのです。
文責: Dr. Kazuyoshi Katogi