kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

連続な周期関数はリプシュッツ連続になるか

タイトル通りの問題を論じます。

 

これは、某質問サイトで見かけた、数学の問題です。

 

結論を先に言います。

 

関数 f : R → R が連続な周期関数の時、

 

f は必ずしもリプシュッツ連続とはなりません。

 

 

 

 

 

反例

 

f(x) = Arcsin x (-1<x≦1)

 

f(x) = Arcsin (2-x) (1<x≦3)

 

として f : ]-1, 3] → [-π/2, π/2]

 

を定義し、f を周期性により R 上に延長する。

 

Df(x) = 1/√(1-x^2),  (-1<x<1)

 

だから、Df(x) → + ∞ (x→1-0)

 

よって、x, y (x<y<1)が 1 に十分近い時、

 

| f(x) - f(y) | = Df(c)|x-y|

 

なる c (x<c<y) が存在し、

 

x, y → 1-0

 

とすると、Df(c) → + ∞ となってしまうから、

 

「ある定数 k >0 が存在し、任意の x, y ∈ Rに対し、

 

| f(x) - f(y) | ≦ k |x - y|

 

が成り立つ」

 

と言うリプシュッツの条件は満たされない。

 

 

 

 

 

 

ちなみに、もとのオリジナルの問題は、

 

「区分的に連続な周期 2π の周期関数は、リプシュッツ連続になる

 

ことを証明してください。」

 

と言うことでしたが、これは明白に出題ミスです。

 

リプシュッツ連続な関数は連続ですが、

 

区分的に連続なだけの関数は、一般には不連続点を許容するからです。

 

 

 

 

補足として、f : R→R がC^1 級の周期函数であれば、f はリプシュッツ連続となります。

 

この証明は簡単で、Df(x) (x ∈ R) の上限 M ≧ 0 は 有限値で、

 

有限増分の公式より、任意の x, y ∈ R に対し、

 

|f(x) - f(y)| ≦ M |x - y|

 

となります。

 

 

 

 

 

文責: Dr. Kazuyoshi Katogi