kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

濃度 (cardinarity) の概念の数学における使用例

ある人が、このような質問をされていました。

 

「基礎論以外の数学で、濃度はどのように使われていますか?

 

病的な反例への使用を除いて。」

 

 

 

 

 

この質問には、僕は答えを持っています。

 

僕の修士論文の、本文 p.25 (pdf の通し番号で、26 ページ目)

 

をご覧ください

 

 

 

 

 

濃度の概念のホモトピー論への適用です。

 

G を位相群, B を位相空間とします。

 

B の開被覆 U と U に乗った G に値をとる

 

cocycle g の組 (U, g) の全体を A とします。

 

明らかに、A は集合です。

 

ξ∈A に対し、ξから標準的に構成された

 

底 B の principal G-bundle を g(ξ) とします。

 

一方, 底 B の principal G-bundle の全体を P とします。

 

P は proper class となります。

 

ここで、各 λ∈P に A の元 f(λ) を対応させ, 

 

g(f(λ)) が λ と G-B 同型なるようにできます。

 

 (選択公理により, A を整列しておく)

 

すると、 任意の λ, μ∈P に対し、

 

f(λ) = f(μ)

 

ならば、

 

λとμはG-B-同型となります。

 

したがって、底 B の principal G-bundle の同型類の全体 Q は、

 

その濃度が card(A) で押さえられているとみなすことができて、

 

Q を集合とみなすことができます。

 

そこでもっと精密に、B_G を G の分類空間とすると、

 

自然な同一視 Q = [B, G_G](ホモトピー集合)

 

ができる、と言うのが、修士論文のメインテーマでした。

 

 

 

 

以上が、濃度の概念の、ホモトピー論における使用例です。

 

余談ですが、過去、修士論文発表会で、

 

Q を集合とみなすことができると言う事実は、

 

自明ではないのではないか、と、

 

T 先生からのご質問があったのです。

 

その答えとして、今ここに記述した内容(修士論文の p.25)

 

を、T 先生にご紹介し、即座に納得していただきました。

 

 

 

 

 

 

文責: Dr. Kazuyoshi Katogi