kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

位相空間の部分集合の境界についての話

位相空間 X の部分集合 M, N に対し,

 

M^f と N^f をそれぞれ, M, N の境界とする時,

 

M ⊆ N ⇒ M^f ⊆ N^f 

 

が成り立たないのは不思議だ, という, 

 

素朴な疑問を聞いたことがあります.

 

学部生の方でしょうか, 位相について, あまりにも難しく考えすぎて,

 

素朴な例をイメージできないのでしょう.

 

 

 

 

 

論理的に説明すると,

 

x ∈ M^f というのは,

 

X における x の任意の近傍 U に対し,

 

U∩M と U∩(X - M)

 

が空でないことと同値です.

 

したがって, M ⊆ N なる包含関係は, 一般には,

 

M^f ⊆ N^f なる包含関係を導きません.

 

 

 

 

 

実際に, 反例をあげて見ましょう. 

 

X = R, M = [-1, 1], N = [-2, 2]

 

とします. X には数直線 R の自然な位相を入れます.

 

すると,

 

M^f = {-1, +1}, N^f = {-2, +2}

 

で, M^f ⊆ N^f ではありません.

 

この場合はもっと強く,

 

M^f ∩ N^f は空集合となります.

 

そういう意味で, 位相空間の部分空間に,

 

その境界を対応させる写像は, 一般には, 包含関係を保存しませんし,

 

包含関係を必ず逆転する, ということもありません.

 

 

 

 

 

文責: Dr. Kazuyoshi Katogi