kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

選択公理と可測集合

今回の数学エッセーのテーマは, 選択公理と可測集合です.

 

と言っても, 基礎論を勉強されている方にとっては,

 

よく知られている結果ですが.

 

 

 

 

 

以下のような疑問を呈する方がいました:

 

『R の Lebesgue 非可測部分集合の構成には, 選択公理が必要ですか?』

 

 

 

 

答え: 必要です.

 

 

 

 

 

何故ならば, 選択公理とは両立しない, 決定性公理 (AD) というのがあります.

 

AD からは, 選択公理 (AC) の否定 not AC が導かれ,

 

ZF + AD からは, R のすべての部分集合が Lebesgue 可測であることが

 

導かれます.

 

さらに, R から構成可能な集合の全体 L(R) は,

 

ZF + AD のモデルとなっていることが示されます.

 

従って, ZF が無矛盾であれば, ZF + AD は無矛盾です.

 

従って, もし,  ZF から R の Lebesgue 非可測集合の存在が導かれるならば,

 

ZF + AD のもとで, R のすべての部分集合は Lebesgue 可測であり,

 

なおかつ, R のある部分集合が Lebesgue 非可測となってしまい,

 

ZF + AD が無矛盾であることに反します.

 

 

 

 

 

 

文責: Dr. Kazuyoshi Katogi