今回の数学エッセーでは, 次の定理を証明します:
定理:
μ_n を n 次元ルベーグ測度, D ⊆ R^2 を μ_2 可測集合,
f : D → [0, +∞[ を μ_2 可測関数,
A = {(x, y, z) ∈ R^3 | (x, y) ∈ D & 0 ≦ z ≦ f(x, y)} ・・・(1)
とする時, A は μ_3 可測で, 上積分に関する等式
∫^* φ_A d μ_3 = ∫_D^* f(x, y) d μ_2 (x, y)・・・(2)
が成り立つ. さらに, A が μ_3 可積分なるための必要十分条件は,
f が D 上 μ_2 可積分なることで, この時,
∫ φ_A d μ_3 = ∫_D f(x, y) d μ_2 (x, y) ・・・(3)
が成り立つ.
ここに, φ_A は R^3 に於ける A の特性関数で, 上積分の定義は [1] vol.1 による.
証明
f(x, y) = 0 for (x, y) ∈ R^2 - D として, f を R^2 上にまで延長しておく.
g: R^3 → R を, g(x, y, z) = z - f(x, y)
と置くと, [1] vol.2, p.88, 命題 3 より, g は μ_3 可測関数で, 従って,
A_1 = {(x, y, z) ∈ R^3 | g(x, y, z) ≦ 0 } = {(x, y, z) ∈ R^3 | z ≦ f(x, y) }
は μ_3 可測集合となる. 一方, 再び [1] vol.2, p.88, 命題 3 より,
A_2 = {(x, y, z) ∈ R^3 | (x, y) ∈ D & 0 ≦ z }
も μ_3 可測集合だから.
A = A_1 ∩ A_2
も μ_3 可測集合となる.
よって, [1] vol.2, p.91, 命題 7 より,
∫^* φ_A d μ_3 = ∫^* d μ_2 (x, y) ∫^* φ_A (x, y, z) d μ_1 (z)
となり, 一方で, 式 (1) より,
(x, y) ∈ D ならば ∫^* φ_A (x, y, z) d μ_1 (z) = f(x, y)
(x, y) ∈ R^2 - D ならば, ∫^* φ_A (x, y, z) d μ_1 (z) = 0
なので, 式 (2) を得る.
最後に,
『A が μ_3 可積分なるための必要十分条件は, f が D 上 μ_2 可積分である』
という事実は, [1] vol. 1 の可積分性の基準より出てくる.
この時の式 (3) は明らかであろう.
参考文献
[1] ブルバキ 数学原論 積分 vol. 1, vol.2
文責: Dr. Kazuyoshi Katogi