今日のテーマは, 商多様体 です.
pdf にまとめました.
商多様体の他にも話題がありますが, 商多様体については目次を見れば,
何ページ目に記載があるのか, すぐにわかります.
商多様体の基本定理は, X を多様体, R を X 上の同値関係とする時,
X/R 上に多様体構造がただ一つ存在し, 標準射影 X → X/R が submersion
になるための必要十分条件は, R のグラフ C が X × X の部分多様体であり,
尚且つ 射影 pr_1 :C → X が submersion になることである, というものです.
商多様体の応用については, リー群 G の閉部分群 H による商 G/H
(left coset space) に多様体構造がただ一つ定まり,
標準射影: G → G/H が submersion になるという定理です.
この定理の証明そのものは, 上記 pdf で証明を与えた商多様体の基本定理
ブルバキのリー群とリー環ではもっと一般の形での定理を述べています.
つまり, X を多様体, G をリー群とし, X に G が左から作用しているとします.
この時, orbit space X/G に多様体構造がつき, 標準射影 X → X/G
が principal G-bundle となるための条件を述べています.
これも, 商多様体の基本定理を知っていれば簡単です.
他にも, 商多様体の応用として, E をバナッハ空間, G(E) を E 上のグラスマン多様体とする時,
X = E × G(E) 上の同値関係 R を x, y ∈ E, F, F' ∈ G(E) に対して,
(x, F) ≡ (y, F') mod R ⇄ x+F = y+F'
で定義すると, G^*(E) = X/R には解析多様体の構造がただ一つ定まり,
標準射影 X → G^*(E) が submersion となるという定理があります.
このように, 商多様体を知っていると, 多様体から新しい多様体を構成するための
テクニックが非常に豊かになります.
文責: Dr. Kazuyoshi Katogi