kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

商多様体

今日のテーマは, 多様体 です.

 

pdf にまとめました.

 

上記リンク先の, 微分多様体の基礎 6』です.

多様体の他にも話題がありますが, 多様体については目次を見れば,

何ページ目に記載があるのか, すぐにわかります.

 

多様体の基本定理は, X を多様体, R を X 上の同値関係とする時,

X/R 上に多様体構造がただ一つ存在し, 標準射影 X → X/R が submersion

になるための必要十分条件は, R のグラフ C が X × X の部分多様体であり,

尚且つ 射影 pr_1 :C → X が submersion になることである, というものです.

 

多様体の応用については, リー群 G の閉部分群 H による商 G/H

(left coset space) 多様体構造がただ一つ定まり,

標準射影: G G/H submersion になるという定理です.

 

この定理の証明そのものは, 上記 pdf で証明を与えた商多様体の基本定理

多様体に商構造がつくための必要十分条件)を仮定した上で,

ブルバキのリー群とリー環に記載があります.

 

ブルバキのリー群とリー環ではもっと一般の形での定理を述べています.

つまり, X 多様体, G をリー群とし, X G が左から作用しているとします.

この時, orbit space X/G 多様体構造がつき, 標準射影 X X/G

principal G-bundle となるための条件を述べています.

これも, 多様体の基本定理を知っていれば簡単です.

 

他にも, 多様体の応用として, E をバナッハ空間, G(E) E 上のグラスマン多様体とする時,

X = E × G(E) 上の同値関係 R x, y E, F, F' G(E) に対して,

(x, F) (y, F') mod R x+F = y+F'

で定義すると, G^*(E) = X/R には解析多様体の構造がただ一つ定まり

標準射影 X G^*(E) submersion となるという定理があります.

 

このように, 多様体を知っていると, 多様体から新しい多様体を構成するための

テクニックが非常に豊かになります.

 

 

文責: Dr. Kazuyoshi Katogi