kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

ブルバキ多様体: 一点の補集合で定義された微分可能関数の延長の問題に関する反例.

今回の数学エッセーでは, ブルバキ数学原論多様体, 2.2.4 の, 一点の補集合で微分可能な関数の延長の問題に関する反例を紹介します.

 

2.2.4 では, ノルム空間 E の開集合 U のある一点 a の補集合 U - {a} から分離多ノルム空間 F への写像 f が微分可能で, x → a in U の時, Df(x) が L(E; F) においてある極限 D_0 に近づく時, f は a に於いて極限値を持ち, 連続性によって U 全体に拡張され, しかも a に於いて微分可能で, その導値は D_0 となる, というふうに述べられています.

 

これには簡単な反例があって, E = U = R, F = R, a = 0 で, f(x) = x for x<0, f(x) = x+1 for x>0 とすると, Df(x) = 1 for U - {a} ですが, f は 0 において極限値を持ちません. よって, f を連続性によって R 全体に拡張することはできません. 

 

それでは, E が R 上 2次元以上で, F が完備でないノルム空間の場合の反例はどうなるか. これは難しいので, こちらの pdf を参考にしてください. pdf 128 ページ目 (本文記載のページだと, 118 ページ目) から反例の構成が読めます.  

 

実は, 2.2.4 が成り立つために, 条件が不足していて, E の R 上の次元が 2以上で, なおかつ, F が点列完備であるという条件を付け足せば, 2.2.4 は正しくなります. これらの条件の一方でも外すと反例があるのは, 今述べた通りです.

 

 

文責: Dr. 加藤木 一好