今回の数学エッセーでは, ブルバキ『数学原論』多様体の, principal fiber bundle の記述の間違いを紹介します.
具体的には, p.61, 6.2.2 です. G が P に適性かつ自由に作用するとありますが, G が P に適性作用するためには, 底空間 B がハウスドルフであることが必要十分となります.
実際, B がハウスドルフならば, P ×_B P = { (x, y) ∈ P×P | π(x) = π(y) } は P × P の閉部分集合で, 写像 f : P × G→ P × P, f(x, g) = (xg, x) は 位相同型である. よって, f とinclusion j : P ×_B P → P×P との合成 jf は適性写像であり, G は P に適性作用する.
逆に, G が P に適性作用する場合, 上記の写像 f の像 Im(f) は P×P の閉部分集合 であり, orbit space P/G はハウスドルフとなる. よって, B が P/G に位相同型であることから, B もハウスドルフである.
余談ですが, ブルバキは多様体の理論を作る時, 多様体を必ずしもハウスドルフでないとしていましたが, fiber bundle の理論の構成の際には, 多様体の満たすべき条件として, 暗黙に, ハウスドルフを仮定していたのではないかと思います.
文責: Dr. 加藤木 一好