今回の数学エッセーでは, ローマン・メンショフの定理を紹介します.
定理 (ローマン・メンショフ)
U を複素平面 C の開集合, f:U → C を連続写像で, U から R への連続写像 u, v を使って
f = u + iv と書き, u, v を実2変数実数値関数と見做したとき,
u, v はそれぞれ D_i u, D_i v を持ち (i = 1, 2),
D_1 u = D_2 v, かつ D_2 v = -D_1 u が成り立つとする.
この時, f は正則である.
この定理の著しいところは, D_i u, D_i v (i = 1, 2) の連続性を仮定しないところです.
もし, D_i u, D_i v (i = 1, 2) が連続ならば, これはよく知られた定理です.
有名なグルサの定理では, f が複素1回微分可能であれば f は正則であると述べておりますが,
その意味は, u, v が実2変数関数として U 上至る所全微分可能で,
コーシーリーマンの関係式を満たす時, f は正則であるということです.
従って, このローマン・メンショフの定理はもっと強いことを言っています.
文責: Dr. Kazuyoshi Katogi