今回は、科学の考え方を二つ、紹介します。
一つは、定性的な考え方。
もう一つは、定量的な考え方。
「定性的な考え方」とは、
二つの異なる数字があったとして、
「数字が違っているから性質が違う」
とする考え方です。
典型的な例として、
pH 4 ならば酸性,
pH 12 ならばアルカリ性。
そういう考え方です。
これは、小中学校レベルで主に使用される考え方です。
(もっとも、小中学校では、 pH は習わないと思います。
酸性とアルカリ性の対比だけ、学びます。)
次は、定量的な考え方。
これは、二つの異なる数字があったとして、
それがどのくらい異なり、
自然現象にどの程度の影響があるのかを問題にする考え方です。
この考え方は、高校大学レベルでよく問題にされますが、
この考え方は、経験豊富な社会人にとっても、難しいものです。
ここで注意として、定量的な考え方は、
単に数値化すればいいというものではありません。
例えば、A 社の普通乗用自動車が最高時速 150km/h,
B 社の普通乗用自動車が最高時速 151km/h だから、
A 社の車よりも B 社の車のほうが優れている、
そんな結論の出し方は、速いか遅いかだけにしか着目していませんから、
定性的な考え方と同じです。
(ご存知のように、日本では一般道路の制限速度は
60km/h, 高速道路では制限速度は 100km/h ですから、
この比較には意味はありません。)
通常の人間が通常の生活の中で入るお風呂の例を挙げます。
40℃のお風呂と 41℃お風呂。
どちらもちょっとぬるめで、人間がゆっくり入れる温度です。
40℃か 41℃かで個人の好みはあるかもしれませんが、
ゆっくり入れる、という意味では、
ここにさほど大きな違いはありません。
では、80℃のお風呂と 87℃のお風呂ではどうでしょう。
7℃も違うから、これは大きく違うと考えるのが普通でしょうか?
いいえ、人間が生活の中で入るお風呂の温度としては、
80℃と 87℃では、どちらも熱すぎますね。
とても入れるものではなく、
その意味では、この両者に大きな違いはありません。
では、40℃と 47℃ではどうでしょうか。
40℃は普通の人が普通にゆっくり入れる、ぬるめのお風呂です。
赤ちゃんにはちょっと熱めかもしれません。
しかし、47℃は、多くの人にとっては、かなり熱いお風呂です。
江戸っ子爺さんならば、ちょうどいい湯加減かもしれませんが。
つまり、80℃と87℃の時と同じ 7℃差でありながら、
40℃と 47℃のお風呂では、通常の人間にとって大きく違います。
このように、定量的な考え方では、
数字が違っているから本質的な性質が違う、
という風には、必ずしも考えません。
物事の本質は何なのか、
定性的に、というだけではなく、
定量的に考えると、それはよく見えてくると思います。