kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

数学の証明の無駄の省き方 (LK におけるカット消去)

この数学エッセーでは, 数学の証明の無駄の省き方について, 数学基礎論の立場で, 紹介します. ここでは, 例として ZFC の公理系について論じますが, 他の形式的体系についても同様です. 実は, 数学では, ZFC から命題 A を証明した時に, その証明に無駄があ…

中国語の勉強〜食べ物〜

中国語を勉強していて、なんか面白いと思ったこと。 スパゲッティを意味する中国語を、日本語に直訳すると、 『イタリア麺』 なるほどねえ。

作業終了

数学エッセーを、ヤフーブログからはてなブログへ移植する作業が、 やっと終了しました。

多様体論から代数幾何学への橋渡しをする本

僕は以前, 代数幾何学の本の最初の方を少し読んで, 「環付き空間」なる記述を見かけたことがあります. そのときの感想 「なにこれ?」 見事につまづきました(笑) それから 2 年くらいののちに, 僕は, ある本と出会いました. C^∞ Differentiable spaces (Sp…

non-degenerate な可微分写像の単射性

ある掲示板で, 次のような問題を見かけました: f : R^n → R^n が至る所微分可能で, そのヤコビ行列式 det J(f(x)) が至る所 ≠ 0 ならば, f は R^n 上 1-1 になるか? 答え. n>1 であれば, 反例があります. x = (x_1, ... , x_n) ∈ R^n に対して, f(x) = f(x_1…

不等式の簡単な問題

今日は, 某掲示板で見た, シンプルな問題です. f:R → R を関数で, 任意の x, y ∈ R に対し, f(x) - f(y) ≦ (x-y)^2 が成り立っているとする. このとき, f は定値関数であることを示せ. 解法 x と y の役割を入れ替えれば, 任意の x, y ∈ R に対し, f(y) - f(…

グラフが弧状連結になる関数の連続性

今回の数学エッセーでは, R のコンパクト区間 [a, b] からハウスドルフ空間 Y への写像 f のグラフ G が弧状連結の時, f が連続になることを証明します. f が連続ならば明らかに, G は弧状連結となりますから, この逆が成り立つ, という定理です. https://ka…

グラフが連結になる関数は連続とは限らない

今回の数学エッセーでは, 関数のグラフの連結性と 関数の連続性についての関係を話題にします. 初等的な, 軽い話題ですが, 某掲示板で, 関数の連続性を, そのグラフの連結性と混同しているかのような 記述を見かけましたので, 一つ, 注意を喚起しておきます.…

一様空間と選択公理

今回の数学エッセーでは, 一様空間論について, 軽い話題です. 一様空間論は, ブルバキの位相 Chap.2 において定式化されています. その中で重要な定理は, 一様空間の分離完備化や, よく知られた定理: 『準コンパクト一様空間から一様空間への連続写像は, 一…

ブルバキ数学原論に超限論的選択関数が出てくる理由

ブルバキの数学原論には, 超限論的選択関数が出てきます. A(x) を x を変数とする論理式とする時, τ_x(A(x)) の形で, A(x) を満たす x が存在する時は, そのような xのうちの一つ, A(x) を満たす x が存在しない時は, ある一つの対象を表します. ブルバキは,…

選択公理と可測集合

今回の数学エッセーのテーマは, 選択公理と可測集合です. と言っても, 基礎論を勉強されている方にとっては, よく知られている結果ですが. 以下のような疑問を呈する方がいました: 『R の Lebesgue 非可測部分集合の構成には, 選択公理が必要ですか?』 答え:…

写像の一点における値と写像による集合の像の違い

今日は, 数学をする上では紛らわしい, 記号の区別についてです. 以前も、同じようなことを書いたかも知れません. E, F を集合, f : E \to F を写像とします. 集合論的には, f = (G, E, F) なる三つ組で, G \subseteq E \times F であり, 任意の x \in E, y, …

数学クイズ

今回の数学クイズは, ある中学生の方が, おじいちゃん, この問題解ける? と, おじいちゃんに出題し, そのおじいちゃんは解けずに, おじいちゃんの知り合いの, 数学マニアの方に依頼したのですが, その数学マニアの方も解けず, 僕のところに回ってきたもので…

位相空間の部分集合の境界についての話

位相空間 X の部分集合 M, N に対し, M^f と N^f をそれぞれ, M, N の境界とする時, M ⊆ N ⇒ M^f ⊆ N^f が成り立たないのは不思議だ, という, 素朴な疑問を聞いたことがあります. 学部生の方でしょうか, 位相について, あまりにも難しく考えすぎて, 素朴な例…

中間値の定理と general topology

最近, こんな問題を見ました: 『f : R^2 \to R を, f(0)= 0 で, f(z) ≠ z for all z ∈ R^2 - {0} なる連続写像とする時, f(z)> 0 for all z ∈ R^2 - {0} もしくは, f(z)<0 for all z ∈ R^2 - {0} のどちらかが成り立つことを示せ.』 証明には, 中間値の定理…

完全性定理の応用

今回の数学エッセーは、比較的シンプルなものとなります。 『完全性定理を応用した定理は、何がありますか?』 こんな質問を見かけました。 この答えには、重要なものがあります。 BGE が ZFC の保存拡大になっていることの超限的証明が、 それです。 完全性…

ルベーグ積分についてのある質問

解析学のネタです。 某掲示板で、こんな質問を見かけました。 R 上の実数値ルベーグ可積分関数列 (f_n) に、 ルベーグ可積分な優関数 g が存在し、 各点 x ∈R に対し、極限 lim _{n→∞} f_n(x) = f(x) が存在するとき、 f(x) は再びルベーグ可積分となり、 ∫ …

ねじれの位置にある直線と直交する線分

今回の数学エッセーでは, 次のことを証明します: 『L_1, L_2 を R^3 のねじれの位置にある直線とする時, a_i ∈ L_i (i = 1, 2) をただ1組取って, ベクトル a_2 - a_1 が L_1 と L_2 の どちらとも直交するようにできる.』 証明: 平行移動により, 初めから, L…

数学のモデルについての問題

ある掲示板で, 次のような問題を見かけました: T をペアノの算術を実質上含む, 帰納的に公理化可能な, 無矛盾な形式的体系とするとき, T の論理式 A と T のモデル M, N で, M 内で A は真であり, N 内で A が偽であるようなものが存在することを証明せよ. …

数列の収束と発散

ある掲示板で、このような問題を見つけました。 級数 Σa_n が絶対収束するならば、 級数 Σ(a_n)^2 も絶対収束することを証明せよ。 これは簡単です。 Σ a_n が絶対収束することにより、 ある番号 から先、|a_n| < 1 よって、ある番号から先、 |(a_n)^2| < |a…

言葉の持つ二重の意味と数学

今回は, 一つの言葉が二つ以上の意味を持つ時, それをそのまま数学に適用すると 間違いを犯す場合がある, と言うお話をします. より詳しく言うと, ある名詞 A が二つの意味 B, C を持つ場合. ある場合では 名詞 A を B の意味で使い, 別のある場合では 名詞 …

大学数学から眺める高校数学~指数関数, 対数関数の微分法.

今回は, 高校で習う指数関数, 対数関数の微分を, 大学数学側から眺めてみます. 高校生向けのエッセーですから, 指数関数の定義にまつわる難しい議論はせず, 以下の性質を直感的には明らかであろうと言う理由で, 公理として認めます. 以下, a>0 は 1 以外の正…

線型空間とその双対が標準的に同型でないことの証明.

今回の数学エッセーでは, 前回の標準的に同型の概念についての記事 に引き続き, 有名な次の定理を証明したいと思います: 標準的に同型と言う概念の定義については, 上記の過去記事を参考にされてください. K を可換体, A を有限次元 K 線型空間と K 線型射像…

標準的に同型, 標準的な同型 と言う概念

今回の数学エッセーでは, 数学の本や論文によく現れる, 「標準的に同型」ないしは「標準的な同型」 と言う用語について解説したいと思います. 「同型」と言う言葉だけならば私たちは即座に, 誤解を伴わずに理解できますが, これに「標準的に」または「標準的…

形式的体系のモデルと LK

今回の数学エッセーでは, 次の命題について, 簡単な解説を試みます. もちろん, きちんとした証明は長くなりますので, 文献を紹介するにとどめます. 命題 T は述語論理よりも強い形式的体系, A は T の論理式で, T の任意のモデルに関して A は真と仮定する. …

ユークリッド空間の連結開集合

今回の数学エッセーでは, ユークリッド空間の連結開集合 U の任意の 2 点 x, y に対し, x, y を結ぶ, 座標軸に平行な U 内の線分からなる 折れ線 L が存在することを証明します. x∈U を固定します. 座標軸に平行なU 内の線分からなる折れ線で, x と結べる U …

単調減少関数の導関数

今回は, Yahoo 知恵袋にあった, 以下の質問について, 取り扱います. f : [0, +∞[ → R が C^1 級で単調減少, lim _{x → +∞} f(x) が存在するとき, lim _{x → +∞} Df(x) = 0 となるか? ここでは, f が狭義単調減少の場合の反例を手短に構成してみます. g : [0,…

数学的帰納法の正しさについての話題

今回は, ある質問サイトで見かけた, 数学的帰納法がなぜ正しいのか? という話題です. 実は, 数学的帰納法が「正しい」と言う時, その意味は, 大きく分けて, 次のふた通りの問題に解釈できます. その 1 数学的帰納法は, 数学のもっと基礎的な考え方から証明で…

確率分布の分散と標準偏差, 不偏推定量についてのはなし

今回の数学エッセーでは, 確率分布の不偏推定量について, 分散と標準偏差の例を扱います. 独立確率変数 X_1, ・・・, X_n が同一の分布 F に従い, 分布 F は 2次のモーメントまでを持つとします. μ を F の平均, V を F の分散とします. つまり, X を F に従…

ベール空間と微分可能関数

今回, ある掲示板で見かけた, 次の問題について論じます. f : R → R を, f(x) = 1 ・・・ x が有理数の時. f(x) = 0 ・・・ x が無理数の時. で定義する時, g に関する微分方程式 Dg(x) = f(x) を解け. 答え 解なし. なぜかと言うと, 以下の定理が成り立つか…