kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

実対称行列の平方根

今回の数学エッセーでは、Yahoo 知恵袋の数学質問コーナーで見かけた、 以下の問題について、論じます。 (Yahoo ブログから、引っ越してきています。) 問題: A を実対称行列とするとき, B^2 = A となるような 実対称行列 B が存在するための必要十分条件を…

商多様体の文献

今回、商多様体の文献を紹介します。 title: C^∞ differentiable spaces Juan. A. Navarro Gonzalez Juan. B. Sancho de Salas 共著 です。 本の方は、 p.129 から、可微分多様体の同値関係による 商位相空間に多様体構造がつくための必要十分条件、 及びそ…

9 ÷ 0 = ? 算数の話

今回は、この話題について解説します。 「9 ÷ 0 = ?」 割り算を習いたての、小学校低学年の子供にどうやって 理解させれば良いでしょうね? まず、いきなり 0 で割らないで、 9 ÷ 2 くらいから始めてくださいね。 9 ÷ 2 = 4 あまり 1 ですね。 この意味は、 …

濃度 (cardinarity) の概念の数学における使用例

ある人が、このような質問をされていました。 「基礎論以外の数学で、濃度はどのように使われていますか? 病的な反例への使用を除いて。」 この質問には、僕は答えを持っています。 僕の修士論文の、本文 p.25 (pdf の通し番号で、26 ページ目) をご覧く…

sin (x), cos (x) の微分可能性.

私たちは高校数学で, sin(x), cos(x) の微分可能性を習います. しかし, 高校教科書に実際に書いてある証明は, 論理的には厳密ではありません. 多くの場合, lim_{x→0, x≠0}(sin(x))/x = 1 の証明がネックとなりますね. 問題なのは, 高校教科書では sin, cos …

置換公理と順序数 ω+ω

今回は、ZF 集合論から置換公理を除いた形式的体系 Z からは、 順序数 ω+ω の存在が証明不可能であることを示します。 以下に、証明のアウトラインを述べます。 まず、Z に於いては、順序数の概念は、 ZF 同様、次のようにして定式化されます。 x が順序数で…

連続な周期関数はリプシュッツ連続になるか

タイトル通りの問題を論じます。 これは、某質問サイトで見かけた、数学の問題です。 結論を先に言います。 関数 f : R → R が連続な周期関数の時、 f は必ずしもリプシュッツ連続とはなりません。 反例 f(x) = Arcsin x (-1

微分の極限交換可能性

Yahoo 知恵袋で、下記のような質問を見かけました: I を R の区間, f : I → R を微分可能関数, a∈I とするとき、 lim_{x→a, x≠a} lim_{h→0, h≠0}(f(x+h)-f(x))/h = lim_{h→0, h≠0} lim_{x→a, x≠a} (f(x+h)-f(x))/h i.e., lim_{x→a, x≠a}Df(x) = Df(a) が常…

Yahoo! 知恵袋での, 数学の質問に対する解答ミスの修正.

今回、Yahoo 知恵袋で、巡回群の単数群についての質問で、 私が間違った回答をしてしまったので、ここに訂正します。 まず、以下の質問 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13161559563 Z/42Z の単数群は、Z/41Z に同型と言ってます…

代数系における準同型定理 Part 2

さて、今回も、代数系における準同型定理についての論説です。 Part 1 に引き続いて、 Part 2 では、群の準同型について論じます。 群や部分群、正規部分群などの定義については、 良く知られているので、既知とします。 また、群の算法は、乗法的に書くこと…

ブログ移植作業

Yahoo ブログから引っ越してきて, 数学エッセーも, 数学的にこれはいいんじゃない? と判断したものを, 移植しています. Yahoo から移植してくる数学エッセーの記事は選んでいます. あまりくだらないものは移植しません.

代数系における準同型定理 Part 1

今回は、代数系における準同型定理について、論じます。 この論説はすでに、ブルバキの代数のシリーズによって、 とうの昔に定式化されていますが、 これから群論をはじめとする代数学を学ぶ数学科の学生さんたちにとっての 一助となれば、幸いです。 まず、…

無限基数の冪等法則 card (A×A) = A

今回は、任意の無限基数 A に対し、 A^2 = A なることを証明したいと思います。 証明、と言っても、私のオリジナルではなく、 良く知られた証明方法を紹介するだけです。 さて、積集合 A×A 内の整列順序 R を, (x, y), (z, w) ∈ A×A に対し、 (x, y) R (z, w…

S^1 から R への 1-1 連続写像

今回、次のことを証明します 定理 1 円周 S^1 から数直線 R への 1-1 連続写像は存在しない。 言い換えれば、S^1 を R へ、連続的に埋め込むことはできない。 証明 仮に、f : S^1 → R を、1-1 連続写像とする。 S^1 は連結空間で、 連結空間の連続写像による…

茨城県立高校入試

毎年恒例の, 茨城県立高校入試が, 明後日に迫りました. 僕の担当する生徒たちにも, 頑張って欲しいです.

リフト定理と複素対数

今回は、リフト定理と複素対数について、論じます。 記号についての約束は、 C を複素数体、C-{0} を C から 0 を取り除いた位相空間、 Z を整数全体、R を実数体とします。 ホモトピー論の基本で、次のリフト定理があります: リフト定理 p: E → B を被覆空…

数学って、なんの役に立つの?

「算数(又は数学)って、なんの役に立つの? 何のために計算を練習するの? 電卓があればいいじゃない。」 幼い子供からこう聞かれて、困ったことのある親御さんは多いと思います。 では、こういう疑問に対して、どう答えたらよいか。 僕は、その答えを一つ…

微分可能関数の不連続点について

今回、タイトルは何やら大袈裟ですが、 某巨大掲示板にあった以下の疑問に、ここでお答えします。 内容は, 大学 1年レベルの数学です. f が R の開区間 I で微分可能な実数値関数で, -1∈I, かつ (x+1)f ' (x) = 2(x+1) ∀x∈I が成り立っているとき、 f ' (x) …

有理数であることも無理数であることも証明不可能な実数.

今回、ある掲示板で話題になっていた、 有理数であることも無理数であることも ZFC から証明不可能な実数を構成したいと思います。 もちろん、ZFC の無矛盾性は仮定します。 N を可算無限基数, M を最小の非可算基数とします。 ZFC の論理式 A(x) を、以下の…

π が消えた !

今回は、同じ太さの円柱 3本を互いに直交させてできる 立体の体積を求めたいと思います。 集合の記号で表すと, A = { (x, y, z) ∈ R^3 | x^2 + y^2≦1 かつ y^2 + z^2≦1 かつ z^2 + x^2≦1 } なる A の体積を求めたい, ということです. まず注意として, B = { …

茨城大学理学部 ベクトル解析 2008 講義ノート詳細版 について part 3

今回は、茨城大学理学部 ベクトル解析 2008 講義ノート詳細版 とタイトルをつけましたが、この講義ノートの内容についての論説ではありません。 この講義ノートの参考文献として挙がっている、 [1] 「ベクトル解析入門」一松信著 についての話題です。 この…

茨城大学理学部 ベクトル解析 2008 講義ノート詳細版 について part 2

今回も、2008 年度に茨城大学理学部で開講されたベクトル解析の講義ノート、 ベクトル解析 2008 講義ノート詳細版 について、重要なことを論じます。 重要なことというのは、このノート、およびこのノートの参考文献 [1]「ベクトル解析入門」一松信著 で論じ…

茨城大学理学部 ベクトル解析 2008 講義ノート詳細版 について part 1

今回は、何回かに分けて、大学院時代の私の指導教授が 学部生向けに担当されていた、 ベクトル解析 2008 講義ノート詳細版について、 誤りの訂正と、証明の簡略化を少々行いたいと思います。 これをお読みの方で、実際に 2008年度、茨城大学理学部で、 ベク…

正方行列の同時対角化の問題

某質問サイトで見かけた問題ですが、 正方行列の同時対角化の問題について、ここで論じます。 ここでは、以下の定理を証明します。 定理 K を可換体、n > 1 を自然数, E = K^n, A_1, ..., A_k を End_K (E) の k 個の元で、そのどれもが対角化可能であり、 …

学術論文の間違いと撤回について

最近話題になっている、学術論文の内容の真偽、および撤回について、 ある程度の経験をした立場で、論じます。 話を簡単にするため、僕の専門の数学について、話題を限定します。 まず、学術論文が、学術誌に掲載されるプロセスからお話します。 数学の研究…

とりあえずの作業が終了

Yahoo ブログが, 今年の 12月にはもう, 廃止されるので, こちら, はてなブログに引っ越してきました. 数学上の記事で, 思い入れの深いものを, こちらへ移植しました. 移植の際に, Mac Book Pro で作業をしたのですが, 最初, ダッシュボード (管理画面) がど…

LJ に於ける, A ⇔ ¬A からの矛盾の証明. (排中律なしでの証明)

ある掲示板で話題になっていました. その掲示板での説明が, 私にはわかりにくかったので, 今回の数学エッセーでは, 論理式 A に対し, (A ⇒ ¬A) ∧ (¬A ⇒ A) から矛盾が導かれることの証明を, LJ で与えます. (A ⇒ ¬A) ∧ (¬A ⇒ A) を R と略記します. ここ…

ロビンソン算術からの論理式 ∀x(k_n≦x∨k_n≦x) の証明不可能性の有限の立場での証明.

このノートでは、以下に定式化するロビンソン算術 N_1 から、 次の論理式が証明不可能であることを 有限の立場で証明する: ∀x(k_n≦x∨x≦k_n) ここに、k_n とは、超数学的自然数 n に対して、 N_1 の定数 0 の前に S を n 個並べたものである。 (k_n は n に…

統計的検定の考え方 〜統計ユーザーの立場で〜

ここでは、行動科学をはじめとする社会科学でよく使われる 統計的検定の、入門的な考え方を述べます。 医学・看護学でも、同様です。 統計用語を用いた学術的な説明を理解するための、第一歩です。 統計学の教科書と、読み比べてみてください。 では、そもそ…

区体論の ZFC に於ける正規モデルの構成.

このノートでは、ネットでは有名な区体論の、 集合論 ZFC 内での正規モデルを構成する。 但し、オリジナルの区体論に於いて「準関数」と呼ばれるものは、 わかりやすさの便宜のために、ここでは扱わない。 通常の数学のように、等号述語論理の上に、 区体論…