kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

数学エッセー

同相な位相多様体の次元.

今回の数学エッセーでは, Yahoo 知恵袋で見た, 以下の問題について解説します: M を m 次元位相多様体, N を n 次元位相多様体で, M と N は同相な時, m = n を証明せよ. 解答: f : M → N を同相写像とする. x ∈ M を任意に取ると, f は同相写像 g : (M, M -…

点列の集積点と極限の話題.

今回の数学エッセーは, 点列の収束と集積点についての話題です. 一般に, 位相空間 X 内の点列 (a_n)_{n ∈ N} が X 内にただ一つの集積点 b を持っても, (a_n)_{n ∈ N} は X に於いて b に収束するとは限りません. 反例: X = R, a_{2k} = 1/k, a_{2k+1} = k …

principal fiber bundle に関するブルバキ『数学原論』の小さなミス.

今回の数学エッセーでは, ブルバキ『数学原論』多様体の, principal fiber bundle の記述の間違いを紹介します. 具体的には, p.61, 6.2.2 です. G が P に適性かつ自由に作用するとありますが, G が P に適性作用するためには, 底空間 B がハウスドルフであ…

ブルバキ多様体: 一点の補集合で定義された微分可能関数の延長の問題に関する反例.

今回の数学エッセーでは, ブルバキ『数学原論』多様体, 2.2.4 の, 一点の補集合で微分可能な関数の延長の問題に関する反例を紹介します. 2.2.4 では, ノルム空間 E の開集合 U のある一点 a の補集合 U - {a} から分離多ノルム空間 F への写像 f が微分可能…

ブルバキ多様体の複素関数の理論の間違いの指摘

今回の数学エッセーでは, ブルバキ多様体の記述の間違いの一つを紹介します. 目立つ間違いを具体的に指摘すると, vol.1 の p.23, 3.3.1 で, 関数 f:U → F が整型であることと微分可能であることとが同値であるという主張ですが, これには反例があります. (複…

ブルバキ数学原論, 代数 vol.7, クリフォード群に関する記述の間違いについて.

今回の数学エッセーでは, クリフォード群についての, ブルバキ『数学原論』の記述の間違いを紹介します. ブルバキ『数学原論』代数 vol.7, p.129, 補題 5 で, G^+ は G の指数 2 の部分群であるという記述がありますが, この主張は, E が 奇数次元の場合は, …

quarternion H 係数の微分が流行らない訳.

今回の数学エッセーでは, 四元数体 H を係数とするノルム空間上の微分法がなぜ流行らないのか, その理由を解説します. 普通は微分と言ったら実または複素関数です. H 上の微分可能関数の定義の最も簡単なものは, 以下のようになります: 基礎体を H とし, E …

定義による保存拡大の統語論的な証明

今回の数学エッセーでは、以前にも述べた、定義による保存拡大についてです。 実は、私は初めから統語論的に証明を与えて、一安心して使っていたのですが、 その統語論的な証明が、一般的には難しいとのご意見を聞いたことがあります。 これが完璧な定式化だ…

商多様体

今日のテーマは, 商多様体 です. pdf にまとめました. 上記リンク先の, 『微分多様体の基礎 6』です. 商多様体の他にも話題がありますが, 商多様体については目次を見れば, 何ページ目に記載があるのか, すぐにわかります. 商多様体の応用については, リー群…

全不連結コンパクトハウスドルフ空間の一性質

久しぶりの数学エッセーです。 今回は、全不連結コンパクトハウスドルフ空間 X の任意の二点 x, y について, x の X における開かつ閉な近傍 V が存在して, ¬ y ∈ V となるかという問題を考えます. 答えは肯定的で, 文献 [1], p.177 の命題 6 によると, x の…

ほとんど至る所一様連続とは?

数学をわかってない人が以前、 『ほとんど至る所一様連続』 という言葉を発していました。 本当にわかっていない。 基本ができていませんね。 さてそれでは、『ほとんど至る所』という言い回しについての解説をします。 (X, μ, B) を測度空間とします。つま…

連続周期関数の一様連続性

今回の数学エッセーは, ある掲示板で見た次の問題に回答を与えます: 『f: R → R を周期 1 の連続関数とする時, f は一様連続であることを証明せよ.』 証明. f = gh : R → R/Z → R と分解できる. ここに, h: R → R/Z は商位相群への標準準同型, g: R/Z →R は…

数学という学問のルーツ

学問のルーツを、ギリシャ哲学であるという人も、この世にはいますが、 数学は違っております。 数学のルーツは、数を数えたり、長さや面積、時間など、量の測定から始まっています。 シュメール人や、古代エジプト人、その他諸々の人たちの遺した数学の技術…

3元数体の非存在証明

今回の数学エッセーでは, 3元数体の非存在の証明を行います. 次の定理が成り立つ: 定理: D = R^3 には, 次のような体構造は入らない: D は R の拡大体で, なおかつ, その体構造は, D のR^3 としての R 線型空間構造と両立する R 線型環 の構造を定める. 証明…

実可微分多様体の射影空間への埋め込み

ある掲示板で、下記のような質問を見つけました: 『(微分多様体は)実多様体としてならば、必ず次元の大きな射影空間に埋め込めるの?』 その通りです。 実射影空間 PR^n は、S^n の -x と x をそれぞれ同一視して得られる、 実 C^ω 級多様体です。 S^n の…

整列可能定理・ツォルンの補題の証明に必要な公理

今日の数学エッセーでは、以下の文献の中から、 選択公理から整列可能定理とツォルンの補題を導く際、 ZF のどれだけの公理が必要かを紹介します。 公理的集合論入門 結論を言ってしまえば、等号述語論理の公理系に加え、 [1] 外延性の公理 [2] 対の公理 [3]…

定礎な関係のノイマン級数

今回の数学エッセーでは, 定礎な関係のノイマン級数は再び定礎であるという定理を, ZF 内で証明します. E を 集合, R を E 上の定礎な二項関係, S を R から定まるノイマン級数とする. つまり, S は E 上の 2項関係で, xSy は, E のある有限列 x_0, … , x_n …

直交座標と極座標

仕事に役立てることを想定して、 私は現在、幾何公差の勉強もしています。 アマゾンで一冊本を購入して読んでいます。 その中で、幾何公差の許容域と言うのがあって、 二つの方式で表現できるとのこと。 つまり、直交座標系と極座標系。 懐かしいですね、物…

正則関数についての初歩

ある掲示板で, 次のような疑問を見かけました: 『C を複素数体, f: C → C を, f(z) = |z|^2 で定義すると, f は原点で Cauchy-Riemman の方程式を満たしているから, f は原点で正則と言えるのではないですか?』 いいえ, 正則関数というのは, 定義域全体で Ca…

ブルバキ多様体の補足ノート Chapter 1, 2

微分多様体の基礎 1 ファイルを更新しました. ブルバキ多様体の第1, 2章の完全な証明がついています. (第1, 2章の定式化は, これで完了です.) 第1, 2章のレベルならば, 私でも完全な証明をつけられますが, 第 3章以降は, そうは行かなくなるでしょう.

弱微分可能関数の基本定理

ブルバキ多様体補足ノート、 微分多様体の基礎 1 更新しました。 今回の更新は、第 23 章です。 重要な定理の証明があります。 定理 r を 0 以上の整数, K = R, or C, E を K ノルム空間, U を E の開集合, F を点列完備な分離多ノルム空間, f : U → F を写…

微分と積分の交換可能性, L^p_F に値を取る関数の微分

ブルバキ 多様体 section 2, 補足ノートを更新しました. 微分多様体の基礎 1 今回の更新は, pdf の第21章 です. 微分と積分の交換可能性についての定式化のみならず, F をバナッハ空間, 1 ≦ p < ∞ とする時の, L^p_F に値を取る関数の微分についても論じてい…

ブルバキ 多様体のノート更新

ブルバキ 多様体のノートを更新しました。 微分多様体の基礎 1 です。まだまだ途中ですが、定期的に、話題を提供していきます。 微分と積分の順序が交換できるかどうかは、 エレメンタリーな問題で、 L. Schwartz の解析学にも、その定式化があります。 この…

数学的帰納法による証明の記述の仕方について

ある方が、数学的帰納法の記述の仕方について、 すごく悩んだことがあると、呟いておりました。 『a+b に関する帰納法で証明する。 n = a+b と置き, a+b が n よりも小さい場合には成り立っていると仮定して, ・・・』 と言う下りが、悩みの元だったそうだ。…

数学の定理のコード番号による管理について。

某掲示板で、次のようなご意見を伺ったことがあります。 『数学の定理も、数字・番号で管理すれば、便利ではないですか? 例えば、「ピタゴラスの定理により」という文面は、 「定理 A-1786 により」とすれば、読む側にとって便利だと思うのですが。』 はっ…

命題論理に必要な公理シェーマと推論規則の数

今回は論理学について、比較的シンプルな話題です。 命題論理に必要な公理シェーマと推論規則の数について、 少なければ少ないほどいい、という立場で論ずるならば、 最終的な回答は、旧ソ連の論理学者、ルカシュビッツによって与えられています。 つまり、 …

3点公式, 5点公式, 7点公式, ・・・ (2n+1)点公式

数値微分で有名な, 3点公式, 5点公式, 7点公式 を一般化した, (2n+1) 点公式 を定式化しました. 微分多様体の基礎1 上記ファイルの p.264, section 20.3 に記述しました. Df(a) = (c_1 (f(a+h) - f(a-h)) + ・・・+ c_n (f(a+nh) - f(a-nh)))/h - d D^{2n+1}…

テイラーの公式

面粗さの勉強が終わったので, 微分法の定式化に取り掛かっております. pdf を更新しました. 微分多様体の基礎 1 今回の更新は, 定理 20.2.1 と, 系 20.2.2 の, テイラーの公式の, 漸近展開としての一意性の部分です. 定理: K を実または複素数体, E を K ノ…

有限の立場での自然数論

数学ノートを新しく作りました. 不完全性定理の pdf これは現在途中まで執筆中です. タイトルは不完全性定理となっておりますが, まだ, 不完全性定理の本題には入っておらず, 有限の立場での自然数論の定式化まで, 完了しております. pdf 本文では,『超数学…

√2が無理数であることの証明は帰謬法 (背理法) になっているか?

我々は, 高校数学で, √2 が無理数であることの, 帰謬法による証明を習います. 推論の中核を言葉で書くと, 以下のようになります: 『√2が有理数と仮定して矛盾が出た. 従って, √2 は無理数である.』 しかし, この推論は, 論理的は, 帰謬法ではありません. 実…