kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

関数の連続性と関数の制限の話題

ブルバキ数学原論, 位相線型空間 vol.2, p.32, 命題4 で, 

『u は M × F で連続であり』

と言う記述があります。

 

E, F, G は位相線型空間で, u : E × F → G は双線型写像なのですが,

実はこの記述の意味は

『任意の点 z ∈ M × F に対して u : E × F → G は点 z で連続』

と言う意味ではなく,

『制限: u|(M × F) : M × F → G は連続』

と言う意味です.

 

 

この二つの微妙な記述上の違いは, 下記の例にて明白にわかります:

f : R → R を, x が有理数の時は f(x) = 1, x が無理数の時は f(x) = 0

とすると,

『任意の x ∈ Q に対して f:R →R は点 x で不連続』

であり, なおかつ

『制限 f|Q : Q → R は連続』

となります.

 

 

ブルバキも, こう言う記述上の微妙な曖昧さがありますから, 

注意して読まなくてはなりません.

 

 

 

文責: Dr. 加藤木 一好