さて, 今回は, 岩波書店『位相幾何学 I』p.25, 例題 2.9 に述べられていた演習問題について少し解説します.
定理の statement は以下の通りです:
(i) C^n から R^{2n} への実線型空間としての同型
f : (z_1,・・・,z_n) \mapsto (x_1,・・・,x_n, y_1,・・・,y_n)
を考える. ここに, 1 ≦k≦n に対し, z_k = x_k + iy_k.
この時, C 係数の n次正方行列 A に対し, 合成 fAf^{-1} を対応させる写像 ρ は,
GL(n, C) を GL(2n, R) へ, U(n) を SO(n) へ移す.
(ii) H^n から C^{2n} への右複素線型空間としての同型
g : (z_1,・・・,z_n) \mapsto (x_1,・・・,x_n, y_1,・・・,y_n)
を考える. ここに, 1 ≦k≦n に対し, z_k = x_k + jy_k.
この時, H 係数の n次正方行列 A に対し, 合成 gAg^{-1} を対応させる写像 ρ は,
GL(n, H) を GL(2n, C) へ, Sp(n) を SU(n) へ移す.
(i) の証明では, 複素係数 n 次正方行列 B を標準的に 2n 次実正方行列 C とみなした時に,
det_R(C) = |det _C(B)|^2
となることを使います. この性質は, ブルバキ数学原論 代数 vol.3 に載っています.
(ii) の証明はもっと難しく, ρ が Sp(n) を SU(n) へ移すことの証明で,
H 係数の正規行列は Sp(n) の行列によって対角化可能であると言う定理と,
互いに可換な正方行列 (B_{ij}) を成分とする行列 X の行列式に関する定理
(ブルバキ数学原論 代数 vol.3 に載っている先の定理の一般化)
を使います.
普通の計算では, ρ(Sp(n)) ⊆ SU(n) を証明するのは難しいでしょうね.
文責: Dr. 加藤木 一好