kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

冪零行列に関する問題.

今回の数学エッセーでは, Yahoo 知恵袋で見た, 

下記の問題を考えます:

 

問題: r, n を 0 < r, n なる自然数とし, 

A を可換体 K 上の n 次正方行列で, A^r = 0 かつ A^{r-1} ≠ 0 とする.

今, x を A^{r-1} x ≠ 0 なる K^n の元とする時,

K^n のベクトルの列:

x, Ax, ... A^{r-1}x

は K 上線型独立であることを証明せよ.

(特にこの場合は, r≦n となる.)

 

回答: b_1, ... b_{r-1} を K の r 個の元で,

y = b_0x + b_1Ax + ... + b_{r-1}A^{r-1}x = 0

となっているとする.

然らば, 

A^{r-1}y = b_0 A^{r-1} x = 0

かつ

A^{r-1} x ≠ 0

だから, 

b_0 = 0

を得る. 

 

以下帰納的に, i< r-1 に対して

b_0 = ... = b_i = 0

を得たとしよう. 

 

y = b_{i+1}A^{i+1}x + b_{i+2}A^{i+2}x + ... + b_{r-1}A^{r-1}x = 0

となるから, 

A^{r-2-i}y = b_{i+1} A^{r-1}x = 0

となり, 

A^{r-1}x ≠ 0

だから, 

b_{i+1} = 0

を得る.

 

よって, 帰納法の仮定より,

b_0 = ... = b_{r-1} = 0

がわかる.

証明終わり.

 

 

文責: Dr. 加藤木 一好