kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

entire function の収束半径 〜有限次元と無限次元の違い〜

今回は、複素解析関数の中でも、entire function と呼ばれるものについて,

 

初歩的なことを論じます.

 

まず, よく知られていることですが, 

 

f : C^n → C が entire function のとき、任意の x ∈ C^n に対し, 必ず,

 

limsup_{n → ∞} || D^n f (x) / n! ||^{1/n} = 0

 

となります. 換言すれば, f の点 x における真収束半径は ∞ となります.

 

しかし, E = l^2(C) (可算型複素ヒルベルト空間) の時は事情が違っており,

 

entire function f : E → C で, 任意の x ∈ E に対して

 

limsup_{n → ∞} || D^n f (x) / n! ||^{1/n} = 1

 

かつ 任意の y ∈ E に対して C に値を取る級数

 

Σ_{n = 0}^∞ D^n f (x)(y-x)^n / n!

 

が絶対収束かつ E 上局所一様収束し, f(y)  に等しくなるものが存在します.

 

つまり, f の真収束半径は, 至る所 1 となります.

 

実際, f(y) = Σ_{n = 0}^∞ (y, e_n)^n

 

と置けばいいです. ここに, (z, w) は E の標準内積で,

 

(e_n) は E の正規直交基底です.

 

ちなみに, 絶対収束の意味は, 正項級数

 

Σ_{n = 0}^∞ | D^n f (x)(y-x)^n / n! | 

 

が収束するということです.

 

ここから, E からある複素フレシェ空間 F の中への複素 C^∞ 級関数 g で,

 

E の任意の開集合 U に対して g(U) が F で非有界なるものの存在が導かれます.

 

これは, F を C^N (N は自然数の全体) に直積位相を与えたフレシェ空間とし,

 

g(x) = (f(nx))_{n ∈ N} for x ∈ E

 

と置くことによって, 直ちに得られます.

 

もちろん, このことからも, F にはノルムがつかないことがわかります.

 

詳細は, こちらのプレプリントに書いてあります.

 

 

 

 

文責: Dr. Kazuyoshi Katogi