kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

S^1 から R への 1-1 連続写像

今回、次のことを証明します

 

定理 1

 

円周 S^1 から数直線 R への 1-1 連続写像は存在しない。

言い換えれば、S^1 を R へ、連続的に埋め込むことはできない。

 

証明

 

仮に、f : S^1 → R を、1-1 連続写像とする。 S^1 は連結空間で、

 

連結空間の連続写像による像は再び連結になるから、

 

f(S^1) は連結である。

 

ここに、R の連結集合は、区間に限られるから、

 

f(S^1) = [a, b]

 

なる実数 a, b ∈ R, a<b が存在する。

 

(f(S^1) が閉区間となるのは、それがコンパクトだから。)

 

今、f の制限

 

f : S^1 → [a, b]

 

は、コンパクト空間の間の同相写像になる。

 

しかし、[a, b] は可縮であり、S^1 は可縮ではないから、

 

これは矛盾である。

 

証明終わり。

 

 

 

 

 

定理 1は、以下のように一般化されます:

 

定理 2 

 

n>1 を自然数とすると、n 次元球面 S^n から R^n への 

 

1-1 連続写像は存在しない。

 

言い換えれば、S^n を R^n へ、連続的に埋め込むことはできない。

 

証明:

 

仮に、f : S^n → R^n を 1-1 連続写像するとする。

 

すると、f は S^n から R^n のコンパクト集合 K 上への位相同型となる。

 

然るに、領域不変の原理より、K = f (S^n) は R^n の開集合となる。

 

よって、K は R^n で開集合かつ閉集合

 

然るに、R^n は連結だから、K = R^n.

 

よって、

 

f : S^n → R^n 

 

は位相同型。

 

ここで、S^n はコンパクトで R^n はコンパクトでないから、矛盾。

 

証明終わり。

 

 

 

 

 

以上の定理の系して、次のことがわかります。

 

系: n>0 を自然数, f : S^n → S^n を 1-1 連続写像とすると、

 

f は全射である.

 

証明: S^n を R^n の一点コンパクト化とみなし、

 

f : S^n → S^n が全射でない連続写像とすると、

 

f の制限

 

f : S^n → R^n 

 

が 1-1 連続写像として定義されるので、

 

これは矛盾である。

 

証明終わり。

 

 

 

 

 

この系より、f : S^n → S^n が 1-1 連続写像の時は、

 

f は位相同型になるので、deg(f) = ±1 となる。

 

 

 

 

また、定理 2 の論証をそのまま使えば、

 

任意の n 次元コンパクト位相多様体から R^n への

 

1-1 連続写像は存在しないことが、証明できる。

 

(位相多様体の場合は、各連結成分について、

 

上記の論証を適用すれば良い。)

 

 

 

 

 

 

文責: Dr. Kazuyoshi Katogi