kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

グラフが連結になる関数は連続とは限らない

今回の数学エッセーでは, 関数のグラフの連結性と

 

関数の連続性についての関係を話題にします.

 

初等的な, 軽い話題ですが, 某掲示板で,

 

関数の連続性を, そのグラフの連結性と混同しているかのような

 

記述を見かけましたので, 一つ, 注意を喚起しておきます.

 

 

 

 

次の命題が成り立ちます

 

 

命題: 

 

a, b ∈ R を a<b とする.

 

f : [a, b] → R を連続関数とすると, f のグラフ

 

G = {(x, f(x)) | x ∈ [a, b] }

 

は [a, b] × R の連結部分集合である.

 

証明. 関数 g : [a, b] → [a, b] × R ,

 

g(x) = (x, f(x)) は連続で, 区間 [a, b] は連結であるから,

 

g による [a, b] の像 G は連結である.

 

Q.E.D.

 

 

 

 

しかし, 逆は成り立ちません.

 

次の命題が成り立ちます.

 

命題 2.

 

f: [0, 1] → R を,

 

f(x) = sin (1/x) for 0<x≦1,

 

f(0) = 0

 

で定義すると, f のグラフ G = {(x, f(x)) | x ∈ [0, 1] }

 

は [0, 1] × R の連結部分集合であるが,

 

f は連続ではない.

 

証明. f が [0, 1] の点 0 において連続でないのは明らか.

 

しかし, f は ]0, 1] 上では連続だから,

 

G' = { (x, f(x)) | x ∈ ]0, 1] } は連結である.

 

そこで, G は G' の [0, 1] × R における閉包 F

 

に含まれるので, G は連結となる.

 

実際, G が連結でないと仮定すると,

 

[0, 1] × R の二つの開集合 U, V が存在し,

 

U ∩ G と V ∩ G はともに空ではなく,

 

(U ∩ G) ∪ (V ∩ G) = G  となる.

 

そこで, G' は G で稠密だから,

 

U ∩ G' と V ∩ G' はともに空ではなく,

 

(U ∩ G') ∪ (V ∩ G') = G'  となるが,

 

これは, G' の連結性に反する.

 

 

 

以上です. つまり, 連続関数のグラフは連結ですが,

 

一般に, 位相空間 X から 位相空間 Y への写像 f

 

のグラフ G = { (x, f(x)) | x ∈ X } 

 

が X × Y の連結部分集合であっても,

 

f は X 上いたるところ連続とは限りません.

 

 

 

 

 

 

文責: Dr. Kazuyoshi Katogi