kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

有理数であることも無理数であることも証明不可能な実数.

今回、ある掲示板で話題になっていた、

 

有理数であることも無理数であることも

 

ZFC から証明不可能な実数を構成したいと思います。

 

もちろん、ZFC の無矛盾性は仮定します。

 

N を可算無限基数, M を最小の非可算基数とします。

 

ZFC の論理式 A(x) を、以下のように定めます:

 

A(x) ⇔ (2^N = M ∧ x = 1)∨(2^N ≠ M ∧ x = √2)

 

そうすれば、等号述語論理の一般論より、

 

ZFC からは、論理式

 

(∃_1 x) A(x)

 

が証明可能です。

 

ここに、∃_1 は、「ただ一つ存在する」

 

という意味です。

 

そこで、A(x) を満たす唯一つの x を a と置きます。

 

ZFC から a が実数であることが証明可能なことは、明らかです。

 

(実際は、ZFC から、a = 1 ∨ a = √2 が証明可能。)

 

しかし、ZFC が無矛盾ならば、

 

aが有理数であることも、無理数であることも、

 

ZFC からは証明不可能です。

 

実際、ZFC から a が有理数であることが証明可能とします。

 

そうすれば、A(a) と

 

A(a) ⇔ (2^N = M ∧ a = 1)∨(2^N ≠ M ∧ a = √2)

 

が ZFC から証明可能であることより、

 

2^N = M ∧ a = 1

 

が ZFC から証明可能です。

 

しかし、2^N = M は ZFC からは証明不可能ですから、

 

不合理です。

 

逆に、ZFC から a が無理数であることが証明可能とします。

 

このときも、

 

A(a) と

 

A(a) ⇔ (2^N = M ∧ a = 1)∨(2^N ≠ M ∧ a = √2)

 

が ZFC から証明可能であることより、

 

2^N ≠ M ∧ a = √2

 

が ZFC から証明可能です。

 

ここで、やはり、2^N ≠ M は ZFC から証明不可能ですから、

 

不合理です。

 

したがって、上記 a は、 ZFC の下で、

 

有理数であることも無理数であることも証明不可能な実数です。

 

 

 

 

文責: Dr. Kazuyoshi Katogi