kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

√2が無理数であることの証明は帰謬法 (背理法) になっているか?

我々は, 高校数学で, √2 が無理数であることの, 帰謬法による証明を習います.

 

推論の中核を言葉で書くと, 以下のようになります:

 

『√2が有理数と仮定して矛盾が出た. 従って, √2 は無理数である.』

 

 

 

 

しかし, この推論は, 論理的には, 帰謬法ではありません. 

 

実数の全体を R, 有理数の全体を Q, 無理数の全体を I として, 

 

証明の大まかな流れを LK 方式で書いてみると, 

 

ZFC, √2 ∈ Q →

--------------------------- ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)

ZFC → ¬ √2 ∈ Q,                     ZFC → √2 ∈ R

-------------------------------------------------------------------

ZFC → √2 ∈ R ∧ ¬ √2 ∈ Q

----------------------------------------

ZFC → √2 ∈ I

 

となります.

 

つまり, ZFC に於いて, √2 ∈ Q を明示的公理として追加して矛盾を導くわけですね. 

 

(I := R - Q として定義されます. )

 

ここで, (1) の推論は, 帰謬法ではなく, 単なる ¬ 右です. 

 

 

 

 

 

ちなみに, ZFC に於ける帰謬法というのは, LK 方式で書いてみると, 

 

ZFC, ¬A →

------------------- ・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)

ZFC → A

 

の形の推論のことです. 

 

推論 (2) に於いて, LK では, 上式から下式へ移行する際には,

 

大概は, cut を使わなくてはなりません.

 

 

 

 

 

文責: Dr. 加藤木 一好