kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

IΣ_1 での自然数論

第二不完全性定理が成り立つ形式的体系として, 

 

IΣ_1 というものがあると聞きました.

 

最近の勉強は, IΣ_1 における第二不完全性定理の定式化です.

 

IΣ_1 における自然数論が, 半環の公理を満たすことの証明が,

 

これまたデリケートです.

 

数学的帰納法の適用の際に, (∀x)A(x, y) の形の論理式を,

 

うかつに帰納法の仮定として設定できないからです.

 

ここで, 論理式 A(x, y) を帰納法の仮定として設定し,

 

x を自由変数とみなし, y についての帰納法とみなせば良いという

 

ご意見があるそうですが, それはダメです.

 

なぜならば, A(x, y) を帰納法の仮定として設定した時点で, 

 

x も y も定数とみなさなくてはならないからです.

 

この辺りの議論は, 私の書いた数理論理学入門のノートに詳しい記述があります.

 

一般に, 形式的体系 T 内で, A(x) → B の形の論理式を証明する際に, 

 

T + A(x) 内で B を証明すれば良いのですが, 

 

T + A(x) という形式的体系内では, x は定数扱いです.

 

このやり方ですと, ゲンツェンの LK との論理的関係性が,

 

以下のようにきれいになります.

 

T から 論理式 C が証明可能なための必要十分条件は,

 

T の非明示的公理の全称閉包の有限列 A_1,・・・,A_n と

 

T の明示的公理の有限列 B_1,・・・B_m が存在し, 

 

sequent

 

A_1,・・・,A_n, B_1,・・・B_m → C

 

が LK provable であることです.

 

この定式化は, 河合文化教育出版の入門数学基礎論 (倉田先生の著書)

 

に, 変更を加えたものです.