kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

置換公理と順序数 ω+ω

今回は、ZF 集合論から置換公理を除いた形式的体系 Z からは、

 

順序数 ω+ω の存在が証明不可能であることを示します。

 

 

 

 

 

以下に、証明のアウトラインを述べます。

 

 

 

 

 

まず、Z に於いては、順序数の概念は、

 

ZF 同様、次のようにして定式化されます。

 

x が順序数である 

⇔ (∀y∈x)(∀z∈y)(z∈x) and (∀y∈x)(∀z∈x)(y∈z or z∈y or y=z)

 

これは、Δ_0 論理式です。

 

任意の順序数 x の整列性も、Z に於いて、正則性公理を用いて証明されます。

 

 

 

 

 

次に、ZFの時と同様、

 

x が順序数であるならば、x の"次"の x∪{x} も順序数である

 

と言う命題も、Z から証明できます。

 

 

 

 

 

次に、ZF の時と同様、

 

y = ω ⇔ y は順序数で、(∀x∈y)(x = 0 or (∃z∈x)(x=z∪{z}))

 

という論理式によって、無限公理により、

 

Z に於いて、最小の無限順序数 ω の存在が証明されます。

 

 

 

 

  

次に、ω と ω の順序和の集合 A を考えます。

 

A と順序同型になるような順序数 x の存在が 

 

Z において証明されたとすると、

 

x ∈ R(ω+ω), かつ x = ω+ω ( ∈ R(ω+ω+1) - R(ω+ω))

 

が、ZF に於いて証明されるので、矛盾します。

 

ここでは、R(ω+ω) が Z のモデルであることが、

 

ZF に於いて証明可能であることを用いています。

 

このことより、形式的体系 Z に於いては、

 

任意の整列集合 a に対し、a と順序同型な順序数 b

 

の存在が、必ずしも証明されるわけではない、

 

ということがわかります。

 

 

 

 

 

文責: Dr. Kazuyoshi Katogi