kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

non-degenerate な可微分写像の単射性

ある掲示板で, 次のような問題を見かけました:

 

f : R^n → R^n が至る所微分可能で,

 

そのヤコビ行列式 det J(f(x)) が至る所 ≠ 0 ならば,

 

f は R^n 上 1-1 になるか?

 

 

答え.

 

n>1 であれば, 反例があります.

 

x = (x_1, ... , x_n) ∈ R^n に対して,

 

f(x) = f(x_1, ... , x_n) = ( (e^(x_1)) * cos(x_2), (e^(x_1)) * sin(x_2), x_3, .... x_n)

 

とおけば, det J(f(x)) = e^{2x_1}>0 ですが,

 

任意の (x_1, ... , x_n) ∈ R^n と任意の整数 n に対して,

 

f(x_1, x_2 + 2nπ, x_3, ... x_n) = f(x_1, ... , x_n)

 

となるので, f は R^n 上 1-1 ではありません.

 

 

 

しかし, n =1 の場合は正しいです.

 

任意の x ∈ R に対して f'(x) ≠ 0 ならば,

 

微分写像導関数に関する中間値の定理より,

 

f' の符号は R 上一定とならなければなりません.

 

従って, f : R → R は真に単調となり, 1-1 です.

 

 

 

 

 

 

文責: Dr. Kazuyoshi Katogi