kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

ベール空間と微分可能関数

今回, ある掲示板で見かけた, 次の問題について論じます.

 

f : R → R を,

 

f(x) = 1 ・・・ x が有理数の時.

 

f(x) = 0 ・・・ x が無理数の時.

 

で定義する時,

 

g に関する微分方程式

 

Dg(x) = f(x) 

 

を解け.

 

 

 

 

 

 

答え

 

解なし.

 

 

 

 

 

なぜかと言うと, 以下の定理が成り立つからです:

 

Baire の定理

 

(h_n) を位相空間 X 上で定義された実数値連続関数の列とし,

 

h_n は h : X → R に X 上, 単純収束するとする.

 

このとき, X の点 x で x において h が連続にならないもの全体 

 

は, X の第一類集合である.

 

証明は例えば,

 

Kosaku Yosida

 

Functional Analysis pp.12-13 に載っています.

 

 

 

 

 

 

すると, もし, Dg = f なる 実数値可微分関数 g が存在するならば,

 

f(x) = Dg(x) = lim_{n → ∞}n(g(x+(1/n)) - g(x))

 

であるから, f の不連続点全体は, R に於いて第一類集合である.

 

一方, R はベール空間であるから, f の連続点全体は, 

 

R に於いて第二類集合でなくてはならない.

 

従って, f は少なくとも連続点を一つは持つわけだから,

 

f が R 上至る所不連続なことと合わせて,

 

矛盾する.

 

 

 

 

 

 

g の非存在は, 次のようにしてもわかる:

 

Dg = f なる g : R → R が存在するならば,

 

f(0) = 1, f(√2) = 0 より,

 

導関数に関する中間値の定理より,

 

0 < x < √2 なる実数 x で,

 

f(x) = 1/2 

 

なるものが存在する. 

 

これは矛盾.

 

導関数に関する中間値の定理は,

 

高木貞治, 解析概論に載っている.

 

注意として, (導関数の連続点がどのように分布していようが, )

 

普通の微分で考えて, 導関数がきっかり 0 と 1 だけの値をとるような,

 

実変数実数値可微分関数は存在しないことを挙げておく.

 

 

 

 

文責: Dr. Kazuyoshi Katogi