kazz の数学旅行記

数学の話題を中心に, 日々の知的活動の旅路を紹介します.

フレッシェ微分可能関数の合成関数の高階微分係数の計算

今回の数学エッセーでは、執筆中の私の数学ノートから、

 

フレッシェ微分可能関数の合成についての話題を紹介します。

 

K を離散でない可換付値体, E, F を K ノルム空間, 

 

U を E の開集合, V を F の開集合, G を K 多ノルム空間, 

 

r を 1以上の自然数, 

 

f : U → F, g : V → G を C^r 級関数で, f(U) ⊆ V なるものとすると, 

 

f と g との合成 gf : U → G も C^r 級で, 

 

任意の x ∈ U, h_1, … , h_r ∈ E に対し, 

 

(*) D(gf) (x) (h_1, … , h_r ) 

 

= Σ D^n g (f(x)) ( D^{k_1} f(x) ( h_{H_1} ) , … , D^{k_n} f(x) ( h_{H_n} ))

 

となる. ここに, 0 < i_1 < … < i_p < r+1 なる自然数の p-pair 

 

K = ( i_1 , … , i_p ) に対し, 

 

h_K = ( h_{i_1}, … , h_{i_p} ) と置き, 

 

式 (*) の右辺の和は, A(r, n) を 1以上の自然数 

 

n-pair ( k_1, … k_n ) で k_1 + … + k_n = r なるもの全体, 

 

( k_1, … k_n ) ∈ A(r, n) に対し, D(r, k_1, … k_n ) を, 

 

{1, … , r} の分割 H = ( H_i )_{1 ≦ i ≦ n} で, 

 

card (H_i) = k_i ( 1 ≦ i ≦ n ),

 

かつ 1 ≦ i < j ≦ n なる任意の (i, j) に対して

 

max (H_i) < max (H_j)

 

なるもの全体とするとき, n が {1, ... , r} を, 

 

( k_1, … k_n ) が A(r, n) を, H が D(r, k_1 … , k_n ) を

 

走る時の和である.

 

 

 

 

 

G が K ノルム空間の場合の証明は r に関する数学的帰納法で容易に示せます. 

 

G が分離多ノルム空間の場合につき, 私のノートでは, 詳しい証明を与えています.

 

L. Schwartz 解析学 vol. 2 では, K が R または C の場合に, 合成関数の高階微分係数の計算式を記述しておりますが, その式では, K の標数が 0 であることが本質的でした.

 

式 (*) は, K の標数が > 0 の場合に, 合成関数の高階微分を計算する場合に有用となります. 

 

 

今書いているこのノートは, いつ書き終わるかわかりませんので,

 

時々, このブログで, 数学エッセーとして, 話題をピックアップして, 

 

紹介していきます.

 

 

 

 

文責: Dr. Kazuyoshi Katogi