僕がまだ、大学院生の頃、母校の学内で、
理学部・クリーン作戦なるものがあった。
これは単に、散らかっているゴミをみんなで片付けて、
理学部の建物周辺をきれいにしようという、
理学部長さんか誰かの、ありがたい仰せであり、
主に、当時理学部棟に生息していた教員・院生を中心に、
招集のかかった企画であった。
クリーン作戦の始まる前、
理学部の建物の前に参加者皆が集まり、
理学部長さんからの、ありがたい訓示があった。
「私たちの身の回りは、放っておくと、
エネルギー状態が悪い方向へ変わっていきます。
これを良い方向へ戻すには、仕事をしなくてはならない。
そこで、みなさん、本日は頑張ってください。」
そう、理学部長さんは、物理系がご専門であらせられる。
いかにも、物理系の先生らしい、訓示である。
この訓示を聞いて、その意味することを理解できた、
数学系の先生や学生は、どれほどいたことだろう?
これは、普通、エントロピーは放っておくと増大する。
エントロピーを減少させるには、外部から、
仕事の作用を加えなくてはならない、
という、熱力学の法則をうまく利用した、
理学部長さんのジョークである。
エントロピーの増大=エネルギー状態が悪い
=散らかっている。
そして、
(物理学の意味での)仕事 = 清掃活動
というふうに、うまくひっかけてある。
へえ~、理学部長さんも、洒落たこというじゃん。
結構感心させられた、学生時代の思い出であった。