現代数学では、集合論 ZFC を基礎として、理論を展開しています。
もちろん、数学基礎論の分野では、様々な形式的体系が扱われますが、
その点は、私はあまり詳しくありません。
ここに、二冊、本があります。
超限論的選択関数を論理体系の中に組み込み、
選択公理が定理として証明されるようになっています。
論理式の記述の豊かさに於いては、
通常使用される形式的体系としての
ZFC よりも豊かです。
現代、普通に使われている順序数の定式化もありません。
その代わり、整列集合に関する記述は
詳しく、素晴らしいものがあります。
ここで、私自身の覚書も兼ねて、集合論初心者のために、
書いておきます。
まず、良く知られた結果から。
ZFC の保存拡大である。
(ここで、保存拡大の意味は、超限論的選択関数なしで表現できる論理式
(変数を表す文字と ∈、=、⇒、¬、∧、∨、∀、∃の組み合わせで書ける論理式)
については、ブルバキ集合論+正則性公理に於いて証明可能であることと、
ZFCに於いて証明可能であることとが、同値になるということです。)
2) 集合論 BGE (集合論 BG に強選択公理を付け足したもの)
は、ZFC の保存拡大である。
(ここでの保存拡大の意味は、集合についてのみ主張する論理式
については、BGE で証明可能と ZFC で証明可能は同値になると
いうことです。)
この辺の結果を速やかに知りたい方は、MathSciNet で、文献を探して読んでください。
キーワードしだいですが、必ず見つかります。
尤も、強制法を学習し、慣れた人ならば、自力で証明を与えられると思います。
私は、「U. Felgner 」の論文:
Comparison of the axioms of local and universal choice,
Fund. Math. 71 (1971), 43-62.
を参考にして、強制法とゲンツェンの LK を使い、
2)に有限の立場での証明を与えたことがあります。
その時のノートが以下になります:
そのときは、すでに他の人が証明して30年以上経った後だったんですけどね。苦い思い出です。
(Felgner の論文では、超限論的な証明を与えています。
1971年当時は、有限の立場での証明が可能かどうかは、未解決でした。)
次に、マイナーな結果
3)ブルバキ集合論は、ZFC から正則性公理をのぞいた形式的体系
の保存拡大にはなっていない。
この結果は、私は検証していませんが(無責任?)、
Sets and Classes (Paul Bernays) に書いてあります。
以上のことから、ブルバキ集合論を数学の道具として使う立場の人は、
正則性公理も追加して、お使いになられると良いでしょう。
そのほうが、ZFC との関係がすっきりしますし、
順序数の定式化も楽ですから。
文責: Dr. Kazuyoshi Katogi